第62回舞踊学会大会


大会概要  第1日目  第2日目  大会企画


 
第62回舞踊学会大会
 「日本伝統舞踊の舞と踊りの技法」


1日目:12月4日(土)
2日目:12月5日(日)
(10:00〜12:00)
一般研究発表 1会場6演題
(10:20〜12:00)
一般研究発表  2会場1 0 演題
(12:00〜13:30)
昼食(理事会
(12:00〜13:30)
昼食
(13:30〜14:00)
基調講演
(14:00〜15:30)
上方舞の舞と踊りの技法
(15:30〜17:00)
ワークショップ
(17:00〜18:00)
総会
(13:30〜14:50)
一般研究発表
(15:10〜17:00)
シンポジウム「舞踊の核動作」
(18:00〜) 交流広場
   


期 日: 2010年12月4日(土)・5日(日)
会 場: 日本大学芸術学部江古田校舎
〒1 7 6 − 8 5 2 5 東京都練馬区旭丘2 − 4 2 − 1 

西武池袋線江古田駅北口より徒歩3分 都営地下鉄大江戸線新江古田駅より1 3 分
主 催: 舞踊学会(会長 古井戸 秀夫)
後 援: 日本大学芸術学部



第62回舞踊学会大会実行委員会
 
  委 員 長:
吉川 周平 
   副委員長: 尼ヶ崎 彬(担当理事)
 
 実行委員:
小林 直弥
島内 敏子
丸茂 祐佳(担当理事)
森 立子
渡沼 玲史












第6 2 回舞踊学会大会
「日本伝統舞踊の舞と踊りの技法」

【企画の趣旨】
  本大会は、奏演とシンポジウム「“ まい” と“ おどり” −狂言と日本舞踊−」(2 0 0 8 年度例会)に続くテー マとして、日本伝統舞踊の動作の核をなす“ まい” と“ おどり” に焦点を絞っております。
まず一日目には、一般的には舞の流儀として認識されている山村流における流祖伝来の歌舞伎舞踊(一 部)と地唄舞(一部)を例に取り上げ、上方舞の舞と踊りの技法を探ります。基調講演のほか、山村 流六世宗家山村若氏に舞と踊りの動作の様式と次世代への芸の伝承方法について実演を交えながらお 話を伺います。また、会員の方(任意)を対象とした手ほどきのワークショップを行い、子どものう ちは身体が動くようにと稽古をつけられる様子を体験していただく予定です。
そして二日目は、映像資料を豊富に活用しながら、シンポジウム「舞踊の核動作」を行います。基調 講演のほか、東アジアの民俗・芸能研究の第一人者でいらっしゃる慶應義塾大学文学部教授の野村伸 一氏をお迎えし、日韓の舞踊の核動作についての報告と討議を重ねる予定です。
このように幅広い視野に立って伝統舞踊の魅力や展開をたどることでわが国の伝統舞踊がより豊かに 理解され、今後のそれぞれの課題研究におかれまして、さらに認識が深まり基盤作りが強められるこ とを期待いたします。













参加費 大 会 会員2000 円(学生1000 円)/ 当日会員3000 円(学生1500 円)
      交流広場 3000 円(学生1500 円)

本大会では昼食(お弁当)のご用意はございません。ご持参いただき会員用控え室(東棟2階 E-206 教室)で お召し上がりいただくか近隣の飲食店のご利用をお願いします。なお土曜日は学生食堂も営業しております。

舞踊学会ホームページ(http://www.danceresearch.ac)にて大会要項および一般研究発表の抄録を掲載いた します。

お問合せ 
第62 回舞踊学会大会事務局丸茂 祐佳
〒176 − 8525
東京都練馬区旭丘2 − 42 − 1 日本大学芸術学部演劇学科 丸茂研究室内
03−5995−8317(開室:月・火・木 *不在の際は下記のメールにてご連絡下さい。)
緊急連絡 03−5995−8260(演劇学科気付)
F A X 03−5995−8319(演劇学科気付)
                  

   
 ※大会事務局補佐 吹田 響子(日本大学大学院生)

大会概要  第1日目  第2日目  大会企画



第1日目:1 2 月4日(土)抄録集
受付開始:9:3 0 東棟2階 E − 2 0 7 教室前



■開会の辞
 
■10:00〜12:00 一般研究発表A [ 各発表1 5 分・質疑5 分]
  会場:東棟2階 E − 2 0 7教室

発表者
所属
タイトル
座長
10:00〜
白井 麻子
長町 裕子

伊藤 美智子
大阪体育大学
香川大学教育学部附属高松小学校
大阪体育大学
「多様な動き」を素材とした視覚教材が表現運動の学 習活動に与える効果: 小学校6 年生を対象に心に響く動きを探る実践的試み
松本 富子
(群馬大学)
10:20〜
中島 由梨
村田 芳子
筑波大学大学院
筑波大学
ダンス学習における「ものを使った表現」の特性と意 義に関する研究
10:40〜
原田 純子
徳家 雅子
関西大学
Rond de Danse
舞踊創作活動における「受容」の意味 ―バッテリー・ダンス・カンパニーによる ダンス・ワークショップにおける一事例―
村田 芳子
(筑波大学)
11:00〜
木場 裕紀
東京大学大学院・大学院生 中学校体育科における「現代的なリズムのダンス」の 定着過程研究
―月刊誌『女子体育』の言説分析を中心に―
11:20〜
水原 佐和子
お茶の水女子大学大学院 H・リードの芸術教育論と Creative Partnerships に みられる芸術教育が有する人間形成の意味について
大貫 秀明
(駿河台大学)
11:40〜
柿沼 美穂
国立環境研究所 動きの「洗練」についての試論

■12:00〜13:30 <昼食>(理事会)
   
■13:30〜17:00 大会企画 会場:北棟1階 演劇学科小ホール
総合司会: 尼ヶ崎 彬(学習院女子大学国際文化交流学部教授)
   
   13:30-14:00 基調講演「大阪の舞踊−山村流の舞と踊り」
古井戸 秀夫(東京大学文学部教授)
   
   14:00-15:30 お話と実演「上方舞の舞と踊りの技法―山村流の伝統とその継承」
お話と実演:山村 若(山村流六世宗家)
     実演:山村 侑
    聞き手:丸茂 祐佳(日本大学芸術学部教授)
   
   15:30-17:00 ワークショップ「山村流の手ほどき」
*軽装でご参加下さい。なお、お持ちの方は足袋・手拭をご持参下さい。
講師:山村 若
   
■17:00〜18:00 総会   会場:北棟1階 演劇学科小ホール
   
■18:00〜19:30 交流広場 会場:食堂棟1階 学生ホール



大会概要  第1日目  第2日目  大会企画



第2日目:1 2 月5日(日)抄録集
受付開始:9:5 0 東棟2階 E − 2 0 7 教室前


■10:20〜12:00 一般研究発表B [ 各発表1 5 分・質疑5 分]
  会場:東棟2階 E − 2 0 5 教室

発表者
所属
タイトル
座長
10:20〜
高橋 京子
早稲田大学オープン教育センター
日本、インド、ナイジェリアの病いと舞踊
杉山 千鶴
(早稲田大学)
10:40〜
近藤 洋子
民俗舞踊研究所「舞スタジオ」 伝統に培われた民俗舞踊の身体技法
11:00〜
遠藤 保子
立命館大学産業社会学部 鶴見和子の舞踊観
―1 9 9 5 年以降の鶴見和子文庫を中心にして―
古井戸 秀夫
(東京大学)
11:20〜
坂田 寿子
舞踊学会、近代文学会会員
谷崎潤一郎『細雪』における山村舞
11:40〜
吹田 響子
日本大学大学院 三番叟物の詞章にみる構成要素〜現行曲を対象に〜

■ 10:20〜12:00 一般研究発表C [ 各発表1 5 分・質疑5 分]
  会場:東棟2階 E − 2 0 7 教室

発表者
所属
タイトル
座長
10:20〜
深澤 南土実
お茶の水女子大学大学院
ローラン・プティ《若者と死》
―映像・資料にみるその変遷―
鈴木  晶
(法政大学)
10:40〜

佐野 勝也
早稲田大学美術史学博士後期課程/早稲田大学演劇博物館グローバルCOE研究員 藤田嗣治の江古田アトリエで構想された『白鳥の湖』 舞台美術プラン − 1 9 4 6 年帝国劇場第1 回東京バレエ團公演の劇場 舞踊空間
11:00〜
林  孝憲
千葉敬愛短期大学 チェルフィッチュの身体表現―日常の身体とダンスの 身体―
貫  成人
( 専修大学)
11:20〜

竹田 恵子
お茶の水女子大学博士後期 課程/早稲田大学演劇博物 館グローバルCOE研究生
ダムタイプによるパフォーマンス≪ S/N ≫(1 9 9 4) 物語構造分析
11:40〜
相原 朋枝

酒向 治子
実践女子大学( 非常勤)
岡山大学
エイコ& コマの活動 ―Delicious Movement Workshopの実際―


■12:00〜13:30 <昼食>
■13:30〜14:50 一般研究発表D [ 各発表1 5 分・質疑5 分]
  会場:東棟2階 E − 2 0 7 教室

発表者
所属
タイトル
座長
13:30〜
宗宮 悠子
寺山 由美
筑波大学大学院
筑波大学
トップダンサー育成プログラムに関する研究
―所属ダンサーの1年の変化に着目して―
細川 江利子
( 埼玉大学)
13:50〜
児玉 孝文
NPO 法人MIYAZAKI 教師教育プログラムとしてのコンテンポラリー・
ダンスワークショップの開発
14:10〜
高橋るみ子
野邊 壮平
宮崎大学
NPO 法人MIYAZAKI
コミュニケーション教育推進事業(演劇、ダンスなど によるコミュニケーション教育制度)における実演家 と学校との関係づくりについての課題
八木 ありさ
( 日本社会事 業大学)
14:30〜
花輪  充
東京家政大学
坪内逍遥の「家庭用児童劇」論に垣間見る演劇の自在 性と創造性を探る −「こだま」「親すずめと子すずめ」「蠅と蜘蛛」の劇 づくりと実演を通して−

■15:10〜17:00 大会企画 会場:東棟地下1階 EB − 2 教室
シンポジウム「舞踊の核動作」 司会:尼ヶ崎 彬
   
   15:10〜15:50 基調講演「民俗舞踊における舞と踊りの核動作」
吉川 周平(京都市立芸術大学名誉教授)
   
   15:50〜16:10 報告「伝統舞踊の核動作」
古井戸 秀夫
   
   16:10〜16:30 報告「韓国巫俗舞踊のチュムサウィ(舞型)とその事例」
野村 伸一(慶應義塾大学文学部教授)
   
   16:30〜17:00 全体討論
吉川 周平・古井戸 秀夫・野村 伸一・尼ヶ崎 彬(兼司会)
   
■閉会の辞  




大会概要  第1日目  第2日目  大会企画



第1日目:大会企画 於:北棟1階小ホール

総合司会: 尼ヶ崎 彬(あまがさき・あきら)
  [プロフィール]1947 年生れ。東京大学文学部卒(美学芸術学専攻)。現在学習院女子大学教授。専門は日本美学・舞踊。著書に『花鳥の使』、『縁の美学』、 『ことばと身体』、『日本のレトリック』、『ダンス・クリティーク』、編書に『芸術としての身体』、『メディアの現在』がある。


■ 基調講演「大阪の舞踊−山村流の舞と踊り」
[要 旨] 山村流には、三つの舞踊がある。ひとつは、座敷舞である。もとは、大坂の芸妓のもので、明治・大正・昭和になると、船場の「こいさん」 にまで広がった。谷崎潤一郎の『細雪』で妙子が舞う「雪」は、その代表曲である。もっとも古い資料は、文化五年(1 8 0 8)までさかのぼる。「玉 つくし」と題した摺物に浪花を代表する芸人のひとりとして、「歌舞(うたまい)の友五郎」の名前が挙げられている。二つ目の舞踊は、「お浚い会」 と祭の「練り物」である。大坂の廓の名物は、揚屋の大座敷であった。歌三味線をずらりと並べ、大勢の芸妓が揃って踊る、総踊りが売り物で あった。料理茶屋の大広間を借りて行う、舞のお浚い会も立派な道具と豪華な衣裳を誇る豪勢なものであった。それが、明治になって「芦辺お どり」や「浪花おどり」に受け継がれている。祭の練り物では、天保三年(1 8 3 2)堀江の番付が残っている。振付をはじめてから、もう「ふた昔」 になると書かれている。三つ目の舞踊は、歌舞伎舞踊である。大坂の劇場は、舞台も広く大道具も立派であった。三方掛け合いなど、華やかな 音曲が好まれた。流祖友五郎も、『覚てあふ羽翼衾』という三段返しの大掛かりなレビューで振付としてのデビューを飾った。文化三年(1 8 0 6) のことである。今年の五月に、山村流の皆さんが一丸となって『慣(みなろうて)ちよつと七化』を復活上演したことは、記憶に新しいところ であろう。

講 師:古井戸 秀夫(ふるいど・ひでお)
  [プロフィール]  1 9 5 1 年、東京に生まれる。早稲田大学演劇科卒業。同教授を経て、現在、東京大学文学部教授。舞踊学会会長。著書・編著に、『歌 舞伎―問いかけの文学』、『新版舞踊手帖』、『歌舞伎入門』、『歌舞伎登場人物事典』など。歌舞伎・日本舞踊の監修・演出作品に、鶴屋南北作『ヲ競艶仲町』、 寺山修司原作『今晩限りで月が・・・』など。


■お話と実演「上方舞の舞と踊りの技法―山村流の伝統とその継承」
[要 旨]  山村流の流祖初代山村友五郎は三代目中村歌右衛門との縁も深く、当時の人気役者の歌舞伎舞踊の振付を多く手がけた。山村流は今 日では座敷舞の流派として名高いが、現六世宗家山村若氏は郁子夫人とともに数多くの摺物や錦絵等を検証し山村流の源を追究され、これまで にも各学会やご自身の舞踊会でそれらの成果を発表されてきた。そこで当学会は、《上方舞の中の舞と踊りの動作の様式》と《次世代への伝承方法》 に要点を絞って実演を交えながら若氏より貴重なお話を伺う。《上方舞の中の舞と踊りの動作の様式》では、踊りの動作の様式として初代友五 郎振付の「歌右衛門狂乱」の二枚扇の部分を取り上げる。この扇の部分は単に「狂乱」として座敷でも舞われていたという。また舞の動作の様 式として初代友五郎振付「ゆき」の後半部分を取り上げる。「ゆき」と言えば山村流と言われるほど山村流の「ゆき」には定評がある。このよ うに流祖伝来の歌舞伎舞踊と地唄舞を例に取り上げて上方舞の舞と踊りの技法と両者の関連を探る。また、《次世代への伝承方法》では山村流 の手ほどきのあり方を伺いつつ長男侑氏へ流儀を継承されていく心得や苦心を語っていただく。そして、山村流の「越後獅子」は一人立ちのほ か二人、三人、五人の四通りがある難しい演目であり、今回は二人立ちの「越後獅子」(一部)を親子で実演する。(文責:丸茂)

お話と実演:山村 若(やまむら・わか)
  [プロフィール]  1 9 6 4 年大阪生まれ。京阪神に伝わる上方舞の代表的流派、山村流六世宗家。祖母の四世宗家若や母の糸のもと幼少より修業する。 早逝した母に五世宗家を追贈し、9 2 年六世宗家山村若を襲名。山村の主流とされている女性らしい舞と評される「座敷舞(地唄舞)」と、初世友五郎よ り伝えられる言わば源流である「上方歌舞伎舞踊」の二つの流れを大切に、と伝統の維持継承に力を注いでいる。門下育成のほか文楽・宝塚歌劇・歌舞 伎の振付、舞踊指導に従事する。芸術選奨文部科学大臣新人賞、文化庁芸術祭賞・新人賞、大阪文化祭賞・奨励賞、日本舞踊協会花柳壽應賞新人賞、舞 踊批評家協会新人賞を受賞。

実 演:山村 侑(やまむら・ゆう)
  [プロフィール] 1 9 9 0 年山村若の長男として生まれる。9 3 年六世宗家山村若襲名披露舞踊会にて初舞台。山村流の一門会「舞扇会」に毎年出演する 他、後見等を務め修業を続けている。観世流能を大槻文蔵、地歌・三絃を菊原光治、鳴物を藤舎呂浩に師事。

聞き手:丸茂 祐佳(まるも・ゆうか)
  [プロフィール]  本名 美惠子。博士(芸術学)。日本大学大学院修士課程修了。東京国立文化財研究所芸能部調査員を経て、現在、日本大学芸術学部教授。 著書に『おどりの譜−日本舞踊 古典技法の復活−』、『舞踊 正派若柳流史 第U期』、『日本舞踊 西川流史』など。

■ワークショップ「山村流の手ほどき」
[要 旨]  今回のワークショップは端唄「夕暮」を取り上げる。山村流の手ほどきは端唄「夕暮」に始まり、その後、端唄「青柳」をしてから、 地歌で「高砂」「鶴の声」「黒髪」「菜の葉」「芦刈」(後半部分)「ひなぶり」などが続く。「夕暮」は隅田川の情景を詠った曲であり、手拭を用 いるのを特色とする。山村流では初めから扇子を持たせないのは扇子は持ち方がわからないので、手拭の持ち方から教えて次に扇子になる。ま た「夕暮」から教えるのは、地唄舞に通じる「対象物への目線」が短い曲の中に集約されているからだと思われ、山村流では六つの目線はすべ て違うことを教えていく。踊りの流派であれば「意味を持つ対象物を表現すること」よりもまず「身体を動かすこと」から入るのではないだろ うか。しかも「夕暮」には、3つ歩く、回る、体の角度を変える、足を引く、座る、足を踏むなど動作の基本もすべて入っている。このため、「他 流で踊りを習っていらっしゃる方に対しても当家では「夕暮」から教えます」と現若氏の祖母の四世宗家は話されていたと古参の弟子から伺っ ている。

講 師:山村 若 [ プロフィール] お話と実演参照。



「歌右衛門狂乱」山村 若

「雪」山村 若

「越後獅子」山村 若

第2日目:大会企画 於:東棟地下1階EB − 2 教室


シンポジウム「舞踊の核動作」

総合司会: 尼ヶ崎 彬 [ プロフィール] 第1日目総合司会参照。

■ 基調講演「民俗舞踊における舞と踊りの核動作」
[要 旨] 舞踊とは、いうまでもなく、身体の動作によって組み立てられている表現である。日本で生育した舞踏は、世界的に評価を高めたが、 現在も舞踊の研究を始めようとして、日本の民俗舞踊の研究に踏み込む人は多くないのであろうか。ピナ・バウシュが初来日したとき、市川雅 が私に民俗芸能研究の視点から論ずれば面白いかも知れないと言ったことがある。ところで、舞踊にも興味を持ち、すぐれた芸能学者であった 本田安次は、日本の民俗芸能は舞踊学に資するものがあると述べている。日本の民俗芸能には、諸外国では失われてしまった長い歴史を持った ものも多く、わけのわからないままでも前からのものを伝承しようとする性質が強い。そこで、はじめに分析の方法を確かめるために、日本の 舞踊の基本動作である、舞(マイ=回る動作)、踊り(ヲドリ=跳躍に基づく動作)の、かたちとその意味を検討する。そして、次にそうした 意志を持って行う「動作」以前のフルエやケイレンといった無意識、あるいは意志に反しておこる、身体の「ウゴキ」にまで考察の対象を拡大 して、舞踊のかたちと意味を考え、ピナ・バウシュが問題としていた、人間は何故舞踊をするのかという問題を、奄美の女性シャーマンである、 ユタの神まつりに見られる舞踊との共通性から検討してみよう。

講 師:吉川 周平(きっかわ・しゅうへい)
  [プロフィール] 1 9 6 6 年早稲田大学大学院修士課程修了。7 4 年同博士課程中退。早稲田大学演劇博物館助手、米国アーラム大学客員教授、鹿児島女 子大学助教授、徳島文理大学教授等を経て、2 0 0 2 年京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター教授。0 4 年同所長。0 8 年同大学名誉教授。文献資 料による松拍の研究、民俗芸能を資料として身体動作の形とその意味を考察してきた。

■ 報 告「伝統舞踊の核動作」
[要 旨]  舞楽、能、歌舞伎、日本舞踊の核になる動作について、VTRの映像を見ながら報告する。舞楽では、四人あるいは六人で舞う平舞(ひ らまい)を中心にする。「打物(うちもの)」=打楽器のリズムに合わせて舞う動作、「吹物(ふきもの)」=管楽器のメロディにのって舞う動作、 この二つの動作を中心に、「左方の舞」と「右方の舞」を比較して、それぞれの舞の核動作を抽出したい。能には、「四拍子」(笛・小鼓・大鼓・太鼓) の器楽演奏による舞と、「謡」の歌詞に合わせて舞う舞がある。笛の「呂中干(ろちゅうかん)」のメロディで舞う「序の舞」、大小鼓の「八拍子(や つびょうし)」のリズムで歌う謡の詞章に合わせて舞う舞を比較する。能面・能装束を付けない、「仕舞(しまい)」の特色についても考えてみたい。 歌舞伎・日本舞踊は、「振りは文句にあり」とされる、歌詞とともに動く舞踊である。楽器の中心になるのは、「三味線」である。三味線曲の核 動作として、「チン・トン・シャン」の動きを確認したい。最後に、「素踊(すおどり)」の様式を検討することになるであろう。

講 師:古井戸 秀夫 [ プロフィール] 第1日目基調講演参照。


■ 報 告「韓国巫俗舞踊のチュムサウィ(舞型)とその事例」
[要 旨]  全体を「一 概説」「二 降神巫の舞踊の事例」「三 世襲巫の舞踊の事例」「四 済州島神房(シンバン)の舞踊の事例」「五 まとめ―韓 国巫俗舞踊におけるチュムサウィの類型」に分けて述べる。朝鮮半島の巫俗が一様でないように、巫舞の舞型(チュムサウィ)も一様 ではない。ソウル以北の降神巫の舞、南部の世襲巫の舞に大別される。また済州島はその歴史からうかがえるように独自の巫俗を維持してきた。 従って、巫俗舞踊を概観する際、この三類への配慮は不可欠である。研究者によってはさらに六類に分けたりもする。降神巫ははじめは舞わず に巫歌を唱える。次いで、神に応じた服を着て左に巡る。やがて神と一体化すると跳舞し、そののち娯神の舞、逐鬼の舞をする。そして託言(コ ンス)を与える。一方、世襲巫は衣服を変えない。全羅道(チョッラド)の巫者は白い服を着る。跳舞はせず、携えた巫具(鈴、扇、紙銭(チジョ ン)[ 白紙を房状にしたもの])の動きで神の来臨や逐鬼を表現する。舞は請神舞、娯神舞であり、また祝願的な舞もある。最後に送神舞をする。 全般的にゆったりと進行させ、その舞は儀礼化し、芸能化している。一般に、北方の巫舞は緊張、緩和の二元的反復、南方のそれは緊張、停止、 緩和の三元的な動作に特徴があるとされる。降神巫の事例として、1. 黄海道の巫舞、2. ソウルの巫舞、また世襲巫の事例として、3. 全羅道タンゴッ レの舞、4. 東海岸の巫舞、さらに済州島の神房の事例をとりあげ、映像を提示する。

講 師:野村 伸一(のむら・しんいち)
  [プロフィール]1 9 4 9 年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部教授。著書に『仮面戯と放浪芸人』、『韓国の民俗戯』、『巫と芸能者のアジア』、『東シナ 海祭祀芸能史論序説』、編著に『東アジアの女神信仰と女性生活』、『東アジアの祭祀伝承と女性救済』など。中国江南、韓国、琉球、台湾などの祭祀芸能 史を通して東アジアの社会と文化の基軸を考察している。

■ 全体討論
吉川 周平・古井戸 秀夫・野村 伸一・尼ヶ崎 彬(兼司会)


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