第77回舞踊学会大会 【第3報】

■主催

 舞踊学会(会長 貫 成人)
 

■大会テーマ 異なる身体の「あいだ」で

企画の趣旨:
 持続可能な世界の実現に向けて、私たちは、今、多様性を認識し、インクルーシブな社会へと変わっていくことを強く求められている。様々な違いを乗り越えるべく、舞踊の「越境」する力には、今後益々期待が集まるであろう。しかし、本大会では、越えるべき「境界」や壊すべき「壁」に対峙する姿勢を一旦緩めて、視点を変え、私たちの「あいだ」に生じるダンス的な事象を考えることで、共生社会実現に役立つ知見を深めたい。

 基調講演では、相互行為研究を軸とする、行動学者の細馬宏通氏をお招きし、人と人が共に生きる場において、複数の身体の「あいだ」で起こっていることについて理解を深め、あらためて舞踊の身体性やコミュニケーションの本質に関して考えるヒントを得たい。

 さらに、シンポジウムでは、森田かずよ氏、南雲麻衣氏、DAIKI氏の3名に、他者と「異なる身体」を強く意識しながら、誰かとの「あいだ」、何かとの「あいだ」で生き、踊ってきた体験を語っていただく。その後、細馬氏を交えての討議を行い、加えて、身体の特異性や共生社会の課題について、最首悟氏からもコメントをいただく予定である。

 参加者と共に、私たちの誰もがそれぞれに「異なる身体」という存在であることへの気づきを確かなものにして、その身体の「あいだ」で、舞踊は今後どのように生まれ、また何を成していくのか、未来に向けて語り合う場をつくりたい。
 

■大会スケジュール(予定)

 

** 講師・シンポジスト略歴 ***********************
 

●細馬 宏通:1960年生まれ。行動学者。京都大学理学研究科博士後期課程修了(博士:動物学)。現在、早稲 田大学文学学術院文化構想学部教授。日常会話、伝統芸能の伝承場面、介護場面からフィクションまで幅広い対象において、人と人とが空間や時間をどうとらえ、どのように相互に思考するかを、発語とジェスチャーの関係から探っている。著書に『うたのしくみ 増補完全版』(ぴあ)、『いだてん噺』『今日の「あまちゃん」から』(河出書房新社)、『二つの「この世界の片隅に」』『絵はがきの時代 増補新版』『浅草十二階 増補新版』(青土社)、『介護するからだ』(医学書院)、『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』(新潮社)など。バンド「かえる目」では作詞作曲とボーカルを担当。

●森田 かずよ:「Performance For All People-CONVEY-」主宰。1977 年生まれ、大阪府出身。二分脊椎症・側弯症を持って生まれ、18 歳より舞台表現の世界へ。義足のダンサー・女優として活動。東京 2020 パラリンピック開会式ソロダンサー。NHKドラマ「パーセント」に出演。人と人のあいだにある差異をあたらしい価値観として捉える、をテーマに創作をおこなう。近年は、多様な身体の人たちと共にダンスを創作、ワークショップなども行う。ダンスカンパニーMi-Mi-Bi所属。2024 年 4 月より、大阪大学大学院人文学研究科人文学専攻(臨床哲学)博士後期課程に在籍中。

●南雲 麻衣:ダンサー、アーティスト、俳優。1989 年、神奈川県生まれ。和光大学現代人間学部卒。3 歳半で失聴、7 歳で人工内耳埋め込み手術を受ける。音声日本語を母語として育ち、大学で手話に出会う。文化施設の運営とワークショップなどの企画の仕事の傍ら、手話を活かしたパフォーマンスを軸に、ダンサー、アーティストとして活動を重ねてきた。近年は、音声言語と視覚言語を用いた複数言語の「ゆらぎ」をテーマにし、当事者自身が持つ身体感覚を媒介に、作品を生み出している。2023 年12 月放送のNHK ドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」に出演し注目を集めた。

●DAIKI(西村大樹):ダンサー、俳優。1994年、神奈川県生まれ。和光大学現代人間学部卒。「ダンスで福祉をデザインする」というコンセプトのダンスチーム SOCIAL WORKEEERZ 二代目代表。日本の軟骨無形成症患者として初めて保健体育の教員免許を取得する。NHK(Eテレ)『バリバラ』『 Eダンスアカデミー』などに出演し、さまざまなイベントやメディアなどを通じて、障がいの有無に関係なく誰もがダンスを楽しめる場づくりを目指して活動をしている。2024年NHK大河ドラマ『光る君へ』安倍晴明の従者、須麻流(すまる)役で、俳優にも挑戦。

●最首 悟:和光大学名誉教授。1936年福島県生まれ。生物学者、社会学者、思想家。東京大学教養学部助手を27年間務め、1977年より第一次不知火海総合学術調査団(水俣病に関する実地調査研究)に参加、第二次調査団長を務めた。また障害者の地域作業所「カプカプ」の設立・運営に携わる。重い障害のある娘と暮らす日々から生まれた『星子が居る』(世織書房)や相模原市津久井やまゆり園事件の死刑囚へ送り続けた60通の手紙をもとにした『いのちの言の葉』(春秋社)、『能力で人を分けなくなる日 いのちと価値のあいだ』(創元社)他著書多数。
 

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■障害のある方への合理的配慮の提供について、ならびに手話通訳について

 第77回舞踊学会大会では、障害のある方への合理的配慮の提供に努めます。合理的配慮を必要とする場合は、事前参加登録時に必要な配慮事項を記入してください。

 聴覚障害等により情報保障の必要な方に向け、企画シンポジウムでは手話通訳を配置します。その他、音声認識ツールの貸し出しも行う予定です。

 配慮願いに関しては下記の「参加申込」の期間中10月5日(日)までにお伝えください。それ以降のお申し出については、対応できない場合もあります。なお、配慮願いをお申し出いただいた方には、大会事務局からメールを差し上げますので、適宜メールのご確認をお願いいたします。

 

■一般研究発表スケジュール(予定)

<口頭発表>

1日目:12日6日(土) A会場

時間 発表タイトル・発表者 座長
9:45-10:05 データで読み解くデニショーン舞踊団のアジア巡演(1925年-1926年):東京・上海公演の比較分析
LI NI(名古屋大学大学院)
武藤 大祐
10:05-10:25 磯崎新の身体観──舞踏から空中浮遊へ 
松井 茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS])
10:25-10:45 戦後日本における『白鳥の湖』の演出と受容 
木村 美咲(同志社大学 4年)
10:45-10:55 < 10分休憩 >
10:55-11:15 「比較的大きいホール」――公演の「場」から捉えなおす日本のモダンダンス史
北原まり子(早稲田大学スポーツ科学学術院)
中島 那奈子
11:15-11:35 文化大臣ミシェル・ギィにおけるダンス・コンタンポレンヌの推進
寿田 裕子(舞踊学会)
11:35-11:40 < 5分休憩 >
11:40-12:00 知覚と表現 ―メルロ=ポンティの身体図式とコミュニケーション
柿沼美穂(東京工芸大学)
貫 成人

 

1日目:12日6日(土) B会場

時間 発表タイトル・発表者 座長
9:45-10:05 振付家の視覚探索活動から捉えるダンサーの動きと身体 ―インプロヴィゼーションに着目して―
小松﨑 結友(筑波大学大学院)
平山 素子(筑波大学) 國部 雅大(筑波大学)
海野 敏
10:05-10:25 振付による音楽の知覚:ロビンスの《In G major》における身体感覚と印象
永井 玉藻(東京大学大学院)
10:25-10:45 「感覚のエンジニアリング」としてのダンス:可視化されたパーソナルスペースを通じた身体知の共有と変容
大脇 理智(メディアトゥルグ)
10:45-10:55 < 10分休憩 >
10:55-11:15 中国古典舞踊の「身韻」が舞踊運動に及ぼす影響−コンテンポラリーダンスのダンサーを対象として−
CHEN YITING(筑波大学大学院)
波照間 永子
11:15-11:35 舞踊劇『小刀会』における女性英雄像とナショナリズム――舒巧の「弓舞」を中心に
王 瑩(名古屋大学大学院)
11:35-11:40 < 5分休憩 >
11:40-12:00 上演型舞踊と対人距離――小空間における舞踊の美学
武藤 大祐(群馬県立女子大学)
外山 紀久子

 

2日目:12日7日(日) A会場

時間 発表タイトル・発表者 座長
9:45-10:05 モダンダンスコンクールにおけるジュニア期の作品に頻出する基礎的な動きの整理
三木 麻衣(筑波大学大学院)  寺山 由美(筑波大学)
塚本 順子
10:05-10:25 1930年代の唱歌遊戯・行進遊戯の教育的価値:女子体育振興会『女子と子供の体育』を手がかりとして
北村 桜(立教大学大学院)
10:25-10:45 全身連動性を伴う動きのアプローチを通した気づき:舞踊の滑らかでゆっくりした動きに着目して
清水知恵(福岡教育大学)門脇弘樹(福岡教育大学) 
梅野貴俊(福岡教育大学)中村貴志(福岡教育大学)
10:45-10:55 < 10分休憩 >
10:55-11:15 コンテンポラリーダンス作品とその分析における脱中心化をめぐる議論の検討
中山 広理(お茶の水女子大学院)
三輪 佳音(お茶の水女子大学院)
福本まあや(お茶の水女子大学)
阪田 真己子
11:15-11:35 原爆表象と越境する身体――ヤコプソン『ヒロシマ』と舞踏の比較
梶 彩子(早稲田大学)
11:35-11:40 < 5分休憩 >
11:40-12:00 ダンスにおけるリズムをめぐる考察:「相互の係わりあい」と「intra-action」の視座から
田巻 以津香(東海大学/日本大学大学院)
貫 成人

 

2日目:12日7日(日) B会場

時間 発表タイトル・発表者 座長
9:45-10:05 アダム・スミスの「模倣芸術論」の執筆意図−舞踊論を中心とした考察
三澤 杏亮(東京大学大学院)
松澤 慶信
10:05-10:25 パリ・オリンピックとダンス:多様な身体表象と国民概念の再編
越智 雄磨(東京都立大学)
10:25-10:45 台湾原住民のダンスカンパニーにみる ⾝体の創造と社会的役割
松倉 祐希(京都大学大学院)
10:45-10:55 < 10分休憩 >
10:55-11:15 教員養成課程のダンス授業における指導のねらい-授業担当教員へのインタビュー調査より-
杉山りん(お茶の水女子大学大学院)
酒向 治子
11:15-11:35 即興表現における言語課題を動きに「転換」する際の転換のしやすさと動きの類似性の関係
齋藤 瀬奈(筑波大学)  寺山 由美(筑波大学)
11:35-11:40 < 5分休憩 >
11:40-12:00 合気道修練者藤平光一の静動一致論について
片山 俊宏(広島大学大学院)
外山 紀久子

 

<ポスター発表>
12月6日(土)・12月7日(日) (9:45~13:00)

発表タイトル・発表者
多様な子どもたちが参加するダンスワークショップの研究-児童期の子どもにおける相互理解に焦点を当てて-
山本結(お茶の水女子大学大学院)
バレエダンサーという芸術労働者:労働環境と労働観に着目して
荒木 秀生(大阪大学大学院)
八月踊りの継承実態と地域的役割 〜鹿児島県奄美市笠利町佐仁集落を事例に〜
小林暖加(お茶の水女子大学大学院)
“ダンカニスム”に関する一考察
遠藤かおり(東京大学大学院)
13歳ファイナリストのネイティブコンテンポラリーダンスに関する一考察
豊福彬文(んまつーポス/宮崎大学客員研究員)
野邊壮平(んまつーポス/宮崎大学客員研究員)
児玉孝文(んまつーポス/宮崎大学客員研究員)
高橋るみ子(宮崎大学客員教授)
児童生徒の精神的幸福とダンス教育の関連性に関する先行研究の検討
千古実奈代(大阪体育大学大学院) 白井麻子(大阪体育大学)
コンタクト・インプロヴィゼーションにおける Attunement現象の形成プロセスについて-経験者を対象とした質的調査を通して
劉晶(大阪体育大学大学院) 白井麻子(大阪体育大学)

※両日12:15~13:00を、ポスター発表者の在席責任時間とします。

 

■参加申込
(1) 申込方法
 参加申込期間:2025年7月10日(木)~2025年11月22日(土)
・参加希望者は、右のQRコードまたはこちらをクリックして、
 Googleフォームでお申し込みください。
(注意事項)
・フォームに必要事項を記入して「送信」ボタンを押すと、
 Googleフォームから自動で確認メールが届きます。
 申込受付期間中は、自動返信メール内のリンク「回答の編集」から、申込内容を
 修正することができます。自動返信メールの取り扱いには十分に注意ください。
 申込確認・修正後は、ブラウザを閉じることをお勧めします。

(2) 大会参加費・懇親会費振込のお願い
・大会参加費・懇親会費は、参加の仕方に応じて定められた金額を2025年11月22日
 (土)までに、下記口座へお振り込みください。なお、年会費振込口座とは異な
 りますので、ご注意下さい。

     銀行名:ゆうちょ銀行
     店 名:〇五八(読みゼロゴハチ)
     店 番:058
     預金種目:普通預金
     口座番号:2663298
     口座名義:ユゲタ アヤノ

 事前振込 一般会員 2500円  院生会員  1500円  学部生会員  無料
      一般非会員 3500円 院生非会員 2500円  学部生非会員 無料
 当日支払 一般会員 3000円  院生会員  2000円  学部生会員  無料
      一般非会員 4000円 院生非会員 3000円  学部生非会員 無料
 懇親会  一般会員・一般非会員 4000円
      院生・学部生会員、同非会員 2000円

・事前振込の場合、振込人氏名の前に、該当する「記番号」を必ずご記入ください。

 

■会場へのアクセス
 和光大学
  交通アクセス:最寄り駅 小田急線「鶴川」より徒歩約15分
         https://www.wako.ac.jp/info/access/map.html

 

■第77回大会実行委員会
 実行委員長:大橋さつき(和光大学)
 実行委員:岡千春(お茶の水女子大学) 高橋京子(フェリス女学院大学)
      寺山由美(筑波大学) 富田大介(明治学院大学)
      弓削田綾乃(和洋女子大学)猪崎弥生(お茶の水女子大学名誉教授)